2005年09月20日

誘導的な新聞の論調

 

例えば、下記の新聞記事がある。 

東シナ海の「天外天」ガス田、本格的生産始まる (09/20)

中国がガス田の採掘準備か 政府、中止申し入れ  (08/10)

 事実のみを伝えているように見えるが、この記事を読んだ時に読者が受ける印象は、「中国は東シナ海の石油やガスを独り占めにしようとしているとんでもない国だ。やっぱり彼らは信用できない。」となる。カンガルーマン自身、つい最近までそう思っていた。

 

ところが、先日カンガルーマンがメンバーになっているアジア研究懇話会の勉強会で行われた話を聞いた後この記事を読むと新聞記事の誘導的論調に改めて驚いた。

 

勉強会のテーマ「東シナ海ガス田開発問題」
スピーカー:猪間明俊氏 石油資源開発元取締役

 

猪間氏は、これまで40年に亘って石油開発に携わってこられたこの道のエキスパートである。そして、猪間氏自身は、政治的信条としてはどちらかというと国家主義者だと断った上で石油開発の専門家として「東シナ海ガス田開発問題」について以下のような見解を述べられた。 

 

要点を列記すると:

1.中国のガス田採掘に対する日本政府の中止要求は「中国の国家主権を無視し、厚顔無恥と言われても仕方のないもの。」だということだ。その理由は、中国が採掘しようとしている場所は、日本が主張している中間線の中国側で中国は正当な権利を有する。それと、油田開発では石油、ガスに国境はないことが常識となっている。つまり、「国境を跨いで石油ガス鉱床が存在している場合、相手国の同意がなければその鉱床の油ガスを採ってはならないという国際法は無いという事」あるいは「石油やガスの流れを止める方法が無いのだから早いもの勝ちということ」になっている。

2.また、日本政府の中国が保有する井戸の明細資料や地質データの開示要求もまた国際常識を外れた主張だ。これは、石油開発会社にとって地質データは最高の「企業秘密であるし、したがって日本の要求に応じるはずは無いだろうから、要求する事自体無駄なこと」ということだ。

3.政府は民間業者に試掘権を与えたようだが、それは単なるこけおどしにしか過ぎない。その業者が具体的に試掘に取り組むとは考えられない。その海域そのものが中国の軍艦がウロウロしている危険な問題地域であり、そういったところに自社の社員を派遣すること等考えられないからだ。それに、実際に試掘をはじめたとしても事業として成り立つ目算は全く不明であまりにもリスクが大きいことがある。

 

4.日本の国益を考えた場合、政府が取り組まなければならないことは国際常識を外れた主張を続けるのではなく、日中両国がこの海域の資源開発をするための合意に向けた話し合いを進めることだ。偏狭なナショナリズムに固執して解決を遅らせることこそ国益に反する行為だ。

 

5.最後に根本的な問題として、この懸案事項の解決と政策立案をするグループの中に専門家あるいはブレーンがいないことがあげられる。

 

 カンガルーマンが、こうした勉強会で専門家の話を聞いていなかったら新聞記事の論調を鵜呑みにしていただろう。

 

 今回の油田開発のケースを通じて学んだ事は、「メディアが発する情報を頭にインプットする時は、情報を発信する側にどのような意図が隠されているかを見抜く力を養う事が必要だ。」と痛切に感じたことだ。

 

 

「内容が役に立った。」と思われたらクリックをお願いします。
人気ブログランキング



この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/nagatomo2/50088933
この記事へのコメント
全く無知な官僚!
霞ヶ関族は東大を卒業し、論理的に●●学的な勉強ばかりし、学士、博士号を取った連中だ!
実社会の常識に無知な官僚の言葉に惑わされたマスコミの責任はとても思いと云わざるをえないですね。
特に日本人はマスコミが公表した内容が全てと思い込む人種ですから、非常に恐い話しですね!
私も30代に鉱山の試掘権を取得する為に、当該町長に贈り物をし続け、認可を得、試掘し監督を務めたことがありますが、当時を思い出されました。
Posted by エバー at 2005年09月21日 13:49
エバーさん、コメント有難うございます。
身体の健康と若さも非常に大事なのですが、世の中の動きも注視してゆきたいのでいろいろな勉強会に参加しています。これも、頭を軟らかく保つための手段だと思っています。ただ、勉強を続けてゆくと世の中のさまざまな矛盾等も目につくようになりますが、そのあたりはブログに書く事で発散しています。
Posted by カンガルーマン at 2005年09月21日 14:56
(1)に関して
同意なしで採掘できないという国際法がないかわりに
日本が中止要求できないという法律もないのでは、と
思ってみたり。

何かのニュースで
国境を跨いで資源がある場合、その割合に応じて
採掘する側は金銭を支払う必要があると聞いたような。

採掘の権利と、日本の資源を無料で吸い上げる
権利は別個のものでは?

(4)に関して
(3)のリスクであるため
日本の最終目標が「話し合いで合意」ならば
「話し合い」の「価値」を高めるために
(1)中止要求と(2)データ提出でもって
対立を演出しているようにも見える

専門家の見解ゆえ妥当と思いますが
結局論理の妥当性を素人が検証するのは難しい訳で
信用の問題になってしまうのかも

カンガルーマンが、こうしたメディアで報道情報を
聞いていなかったら専門家の論調を鵜呑みにしていただろう

こういう結論だってありえる訳で。

Posted by わん田 at 2005年10月27日 02:02
わん田さん、もっともなコメントありがとうございます。
私は石油の専門家ではないので中身の詳細について論じる資格はありません。
しかし、この件については、メディアの報道よりも猪間氏の専門家としての意見を鵜呑みにするほうにまわりたいと思います。

その理由は、これまでの私の経験から専門家は大きく分けて2種類あると考えています。一つは思想的にも、性格的にも偏った考えを持った専門家、もう一つはバランスのとれた考えを持つ専門家。わたしは普通仕事等で専門家の意見が必要な時、バランスのとれた専門家の意見を尊重するようにしています。

猪間氏の場合、スピーチを聞いただけでなく個人的やりとりをした結果、私は非常にバランスのとれた専門家だと判断しました。したがいまして、氏の意見と見解を鵜呑みにし、メディア情報は参考意見にしようと思います。
Posted by カンガルーマン at 2005年10月27日 11:40